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2001年 8月21日

バングラデシュ報告(2):政治不安/この国に対してすべきことは


 台風11号が上陸し、各地に風水害を引き起こす気配ですが、皆様のところはいかがでしょうか? 地域によっては、これで水不足が解消するかもと雨を待っている方もいらっしゃるかも知れませんね。

 さて、私こと、バングラデシュでの70日間の出張業務を終了し、8月16日に無事帰国いたしましたので、ご報告いたします。

 前回に引き続き、水の多いバングラデシュの中でも毎年洪水が起きる地域における、洪水に適応した生活環境を整備しつつ生計向上を図るための調査を行ってきました。現地のコンサルタントに再委託した地元住民の生活実態調査や簡易農村調査、社会経済調査などの結果をとりまとめ、現状の問題点を明らかにしつつ、問題を解決するための戦略を作成することが、今回の調査の目的でした。今回のバングラデシュは雨季に真っ最中でした。曇の日が多く、気温は日本の真夏ほどではありませんが、湿度が高いのには閉口しました。また、雨の降り方がものすごく、局地的な豪雨が1日に数回同じ場所で起きたりしました。そんな中で現場での調査、NGO調査、カウンターパート機関の地方事務所職員や地方政府職員とのワークショップ、現地コンサルタントが作成した報告書の内容精査、先方政府機関との3回の会議の主導、社会経済部門の現状と問題点の整理等、内容は多岐にわたり、70日間はあっという間に過ぎたばかりか、時間が足りなくなって少し仕事をやり残してしまいました。これから1ヶ月で報告書を作ることになっていますが、今後も忙しい日々が続きそうです。

 以前にもご紹介しましたが、バングラデシュの最大の弱点は政治の不安定にあります。今年は5年に1回の総選挙の年にあたり、10月に投票が行われる予定です。これまで5年間政権を担ってきた政党は法律に基づき、7月中旬に総辞職して、政権を大学教授や司法府高官等、有識者からなる中立の暫定政府に委譲しました。暫定政権は発足後3ヶ月以内に選挙を実施することになっています。前与党政党は、過去5年間の実績を強調しつつ、政治の安定のためにも政権を任せるべきだと訴えていますが、解散直前に自分たちに都合の良いような法案を成立させたり、現在のバングラデシュには必要なかろうと思われるような巨大インフラプロジェクトの実施をいくつも決定したり(これらの多くは暫定政権がキャンセルしましたが)と、やりたい放題だったため、解散後は信頼を失っています。野党は、前与党が行った過去5年間の政策が間違っていたと強くアピールし、連立を組んで前与党を打破したい考えです。困ったことに、選挙戦が始まってすぐに、与党と野党の地方事務所で爆弾テロがあったり、銃撃戦があったりで、多数の死者が出ています。新聞によれば、銃や弾薬といった武器の密輸が非常に多くなっており、これらのほとんどが政党に流れているということで、選挙に関連した武力衝突が今後多発する恐れがあります。

 主義主張を訴えれば済むことを、お金や武器を用いて、力で政権を執ろうとするところにこの国の問題の根がありそうです。行政は政治の手足のようなものです。どんな美しい、理論に基づいた計画も、政治的決定の前には、意味をなしません。したがって、行政の仕事の非効率さといったら想像を絶します。国民の本当の幸福を省みない政府は、首都ダッカの大気汚染を世界最悪にし、汚職世界一の国家を作り、女性に対する暴力世界第二の地位を築いたわけです。大変残念ながら、私は今やっている仕事は必要だとは思っていますが、バングラデシュの国の発展に寄与するとは考えられません。国で最も貧しく、教育や保健衛生等社会サービスへのアクセスに恵まれない人々が住む地域の仕事に携わりながら、それでもなお国の発展に寄与できないと考えてしまうのは、自分でも悲しく思います。

 では、この国には何をすべきなのでしょうか? 私には答えが見つかっていません。ただ、日本以外のドナー国(援助国)はNGOに直接援助し、受益者に直接手が届くような仕組みを作っています。ある人は、バングラデシュは独立してすぐに国際社会から援助が入り、自立心をなくしてしまっているから、一度、すべての援助を引き上げれば、少し自分たちで何をすべきかを考えるのではないか?とおっしゃっていました。バングラデシュにはもう1回、2ヶ月間行くことになっています。今度の滞在で印象が変わるとも思えませんが、少しでもポジティブなバングラデシュを見るように心がけ、この国に何が最も必要なのかを考えたいと思います。

 さて、バングラデシュの話ばかり長くなってしまいました。日本は長い、長い、暑い夏が続いたようですね。私が住む穂高も梅雨明けから連日30度を超える毎日が続き、加えて雨がほとんど降らなかったようです。留守中は今回も妻が細腕一つで田畑の管理をやってくれました。こちらへ移った頃は土に触ることさえ、ぎこちなかった妻ですが、6年経った今ではすっかりたくましくなりました。おかげで水稲の作柄は例年になく良く、今年は大豊作かも、と胸算用しています。一方、干ばつの影響は畑作物に強く顕れました。特に水源から遠く、灌漑できなかったカボチャ、ナス、加工トマト等は惨憺たる状況でした。春先も干ばつでコムギ、ライ麦が不調に終わりました。今年は畑の作物にとっては受難の年だったようです。今後期待できるのは、大豆、黒豆、サツマイモ、ニンジンといったところでしょうか。これらはいずれも水源に近く、梅雨明けから数回、これも妻が灌漑してくれました。なお、ジャガイモは梅雨明け後すぐに枯死したため、例年並みの作柄でした。

 これから最低9月一杯は報告書を作成しつつ、秋野菜の植え付け、稲の収穫、畑の片づけ等、忙しい毎日を送ることになりそうです。


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