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2000年10月

カリブの舞台裏  M.U.


 今年6月、JICAの「カリブ地域域内協力プロジェクト形成調査」に「環境一般」担当として参加する機会を得た。私の仕事は、環境法と環境行政、それに廃棄物処理に関して現況を把握し、それに基づいてこの地域に適切な環境関連プロジェクト候補を提案することである。ジャマイカ、トリニダッド・トバゴ、セント・ルシアの3ヶ国を訪問した。

 カリブといえば世界有数の観光地である。しかし豪華なクルーズ船も美しい砂浜も私たち調査団にはもちろん無縁である。ブランド観光地というその華やかな舞台の舞台裏をわざわざのぞいて廃棄物や廃水の処理状況を調査するのが我々の仕事である。残念ながら廃棄物処理は適切に行われているとはいい難く、多くの場合ホテルからは汚水がそのまま海に流されているのが現状である。残された自然を求めて観光客はカリブを訪問するが、その観光という行為が自然に悪影響を与えているという皮肉な結果となっているのである。

 どの国でも最終処分場を見学したが(念のため申し上げると、日本のようにごみをまず燃やすというのは世界的には例外的で、たいていはごみはそのまま最終処分場へ運ばれる)、ジャマイカでは処分場に牛がいたのには驚いた。牛は悠然と生ごみらしきものを食んでいたが、この処分場には有害廃棄物や医療廃棄物も混入しているに違いないので、あの牛が将来人に食べられる運命にあるのならこわいことであると帰国後の今も気になっている。そして私は「舞台裏をのぞく」という癖が抜けず、どんな風光明媚な地に出かけてもやはりそこの廃棄物処理事情が気になってしかたがないのであろう。

 出張中は結構忙しい。週末もホテルの自室にこもり、それまでの会合記録を作ったり、来る会合に備えて手持ちの資料を読み込んだりである。その上、今後思うように情報が得られるだろうかという不安や焦りもあってあまり余裕のある精神状態ではない。しかし一方で、海外出張では、何といっても初めての国に行けるのが楽しい。それに新しい人や仕事との出会いが良い刺激を与えてくれる。

 私は大学卒業後、大手コンサルティング会社の農業部門に籍を置いていたが、環境保護に貢献する仕事がしたくて会社を辞め環境NGOの専従スタッフとなった。その後、廃棄物関連コンサルティング会社、再び環境NGOと転職の後、現在の会社に採用された。ここに至るまでの4つの職場では、それぞれやりがいのある仕事に恵まれ私は多くのものを得たと思っているが、今の仕事に就いてみて、過去の職場での経験が全て今の仕事に結びついているという感触がある。小さな川がいくつも集まって大きな川を形成するように、過去の仕事の経験が束ねられて、現在の私の業務能力になっているという感じである。

 えらそうなことをいえば、私の仕事選びの基準は、それを通じて社会に貢献し自分も成長できる仕事であることである。そして今の仕事はそれを十分に満たしてくれるものだと感じている。


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