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地域開発プランニング ― その考え方・手法・海外事例   
橋本強司著/古今書院 (2000年9月)

開発協力調査団のメンバーとして、これまで世界50カ国以上を訪れている著者の豊富な現場経験と知識に基づいた地域開発プランニングの指南書。対象地域の自立と発展を促す開発計画の要素を明らかにし、成功を収めた海外事例を示しながら、地域のニーズに合った、より実現可能な計画の考案へと導く。


あとがきより・・・

 本書の出版は私にとって長年の懸案であった。おそらく7〜8年前より、援助機関の方々の親切な勧めもあって、地域開発の考え方および地域開発プランニングの手法を事例に即してまとめたいと考えてきた。開発コンサルタントしては幸いにも、この15年程の間ほぼ継続的に地域開発計画の大型案件を担当することができ、事例が豊かになる一方、多忙の中で本書の執筆も遅れざるをえなかった。

 この間、本書にも述べているように開発に対する考え方が大きく展開した。これは当然、地域開発に対する見方および地域開発プランニングのやり方にも影響を与えた。私が見る最も大きな変化は、地域開発の考え方・アプローチが、少なくとも発展途上国に対する開発協力においては実質的に主流となってきたこと、および地域開発プランニングにおいて参加型計画が重視されるようになってきたこと、である。しかしこれらのことは、開発協力に携わる人達の間でも、必ずしも広く認識されているとは言えない。

 なぜ今地域開発か、なぜこれから益々地域開発かについて[...]もう一度私の考えをまとめておきたい。まず[...]世界的な市場経済化、開放化の流れの中で、近隣諸国との関係をも活かし比較優位の確立を通じて、いかに地域開発を図るかが益々重要性を増している。これは、いわばマクロな問題である。一方、社会的弱者を視座の中心に据え地場資源の地元住民による管理・活用を目指し、地元住民の基本ニーズに応えるという地域開発の基本課題には変わりはない。これはミクロな課題と言える。

 世界的な市場経済化、開放化がともすれば「一人勝ち」の世界につながりかねない状況にあって、単に地域開発の正攻法に沿って基本ニーズの充足を図るだけでは、比較優位の確立、地域の自立には結びつかない。開発についての価値観が多様化する中で、上記のミクロおよびマクロな課題の双方に合わせて対処し、いかに地域の自立・統合を図っていくか、が今問われている。

 これに対して、政府開発援助(ODA)の面において、および、より幅広い社会開発の面において、2つの方向性を示すことができる。まずODAの面においては、「人間を中心として援助効果を高めるためには地域開発アプローチが必要」ということである。また社会開発の面においては「グローバル化する程、個(人間)が大切になる」という、いわゆるグローバル・パラドクスがある。

 個々の人間、とくに社会的弱者に相当する人間を中心として基本ニーズに応えるのが地域開発の基本課題(ミクロ)であるが、ボーダレス化する世界経済の中で、このような正攻法のみを取ることは、これらの人間を敗者にすることにほかならず、そもそもの目的を裏切ることとなる。彼等の属する地域社会をテコとして、基本ニーズに応えるための生計向上活動を競争力のある経済活動へとつなげていくこと、それによって地域の自立・持続的開発を図っていくこと、が大切である。人間開発を地域社会を通じて図っていくことがODAの援助効果を高めることであり、これはまさしく地域開発アプローチである。

 グローバルな動きと個々の人間とが空間的接点を持つのが地域であり、グローバル化と人間(個)の尊厳とが最も鋭く対峙するのが地域開発である。ボーダレス世界は、グローバルな情報・金・人・モノの流れの中に個が埋没する世界であってはならない。人と人との直接的つながり・交流が文化から外交まであらゆることのベースとなり、個が生きる世界としなくてはならない。情報技術の発展は、そのために利用すべきものである。グローバルな動きを地域で捉え、人間とつなぐ中間項として地域社会があり、人間開発を中間項を介してグローバルにつなぐのが、これからの地域開発である。

 このような概念を実体化するための計画アプローチとしては、トップダウンとボトムアップとをいかに整合させるかが問われる。草の根レベルへの影響に配慮してマクロ・プロジェクトを計画すること、より高次な地域への参加、高いレベルでの人間開発・社会開発へとつながる参加型プロジェクトを計画すること、これらがこれからの地域開発プランニングの最大の課題である。

『地域開発プランニング』表紙


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