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日本を変える 日本人が変わる   橋本強司著/山手書房新社 (1995年11月)

「政府任せ」、「他人任せ」、「他国任せ」の国際協力の時代は終わった。いや、終わらなければならない。「国が国際協力の最前線にいるわけではない。個人がいるのである。最前線からの声が一般の人々に伝わること、普通の人々のメッセージが最前線で生きること、これがより効果的な開発協力につながる」のだ。個人は無力ではない。相手の立場に立ってものを考え、自分にしてほしいことを他人にする、そして、自分の意見をしっかり主張しながら異なる意見にも耳を傾け、とことん話し合う。その姿勢と行動があれば世界ですら変えていくことができる。国際社会のボーダレス化が加速する中で今後ますます必要なのはより多くの「普通の人」がその仕組み作りに参加することだ。


序章より・・・

 湾岸戦争において、ハイテクを駆使したアメリカ軍の正確極まりない爆撃の様子が、まるでテレビゲームのように映し出される。また、ソマリアの悲惨極まりない飢餓のありさまが茶の間に繰り返し繰り返し流される。テレビというクール・メディアに慣らされてしまうと、自分が実感する日常に対してテレビのインパクトは薄れてしまい、何を見ても現実感を持ちにくくなってしまう傾向はあるだろうが、ソマリアのメッセージはあまりにも強烈であった。もし、テレビゲームのようにボタン一つで自分の選ぶアクションが取れるものならば、多くの人々がボタンを押したことだろう。しかしながら現実には、アクションはおろか自分の意見を、アクションをとりうる立場にある人に伝えるすべすらない。

 多くの人は、何らかのきっかけ・機会があれば、たとえ小さなことでも国際協力に役立つことをしたいと思っているだろう。どうしたら国際社会への日本の貢献度を高めることができるかについて、具体案を持っている人も少なくないかもしれない。しかしまた多くの人々が、国際協力は自らの日常には関係のない、一部のそれなりの専門家による行為と思っていることも事実だろう。そして結局多くの人々は、機会があれば何かをするつもりだが、当面は何もできない、目の前の生活が大切だ、という結論に落ち着いてしまう。

 佐川急便問題で金丸氏を議員辞職に追い込んだことは、一般国民が力を合わせれば世の中の大勢にも影響を与えることができることを示したかのように見える。しかしあれほど単純で非日常的な事例は、全く参考にならない。PKO問題一つを取ってもわかるように、国際協力にかかわる諸問題は単純ではない。「息子を再び戦場に送るのは許さない」とおばさんが叫んでも誰もついてはこない。また国際協力は非日常的なことではないのである。

 国際協力を通じて国際社会への日本の貢献度を高めるためには、相当な改革が必要である。大前研一氏の表現を借りるなら、国際協力についても今や「程度」の議論ではなく「方向」の議論が必要なのである。日常的問題に対して漸進的改革を論じるのは比較的容易であろう。これは「程度」の議論である。一方「方向」の議論の多くは、日常的に何をなすべきかの指針にならない。「リクツや理想はそうだが、現実には・・・・・」という話になりかねない。

 このようなジレンマの中で、本書では国際協力のために「今、何ができるのか」を考えようとしている。理想を描くのみにとどまらず、また日常に流されず、日常からの国際協力を考えたいと思ったのである。いつか到達できるかもしれない理想を思い描き、それに近づくおおむね正しい方向の一歩を踏み出すことが、何より大切だと思う。 協力というのは相互的なものであり、開発を最も本質的に人間の開発ととらえるならば、様々な方法で相互的に人間を啓発し合う国際協力は、すべて開発協力である。そして実質的で中身のある、より良い国際協力が実施されやすい仕組みを作ることも開発協力の一環である。

 開発協力は人が基本であり、より良い開発協力のためには、国際社会への正しい認識と協力の動機づけを持った人が多くいること、及びそういう人を中心として国としての総意が形成される仕組みがあることが必要である。この開発協力のための仕組み作りと人づくりとが、本書のテーマである。

(中略)

 開発コンサルタントというのは職業柄、いわゆる異体験をする機会が他の大部分の人より多い。異文化との接触、異人種との交流、異世界の見聞等である。また開発と国際交流にかかわる諸問題について、いわば協力の前線で日常的に考えている。結果として、それなりの視野と独自の視点を持っているはずである。各分野の専門家を含めて多くの人たちが真面目に考え、議論し続けている事柄に対しても、開発協力の視点から多少違った切り口を示すことで、いささかなりとも役に立つことができるのではないかと思っている。

『日本を変える 日本人が変わる』 表紙


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